涙を湛える

SIGMA 17-70/2.8-4.5 DC MACRO

<涙に関するメモ>
何年か前、お人形の瞳を自作していたとき、
何かのミスで、どうしても涙を溜めたみたいに見えたことがあった。
規格外だと思ってはいたもののそれはそれでかわいらしいものだった、
なんてことを思い出した。

瞳に水の膜を張る、目の下に涙の粒を作る、などなど。

自分の泣き顔は無様なだけなのに、
子どもの泣き顔はどの子もかわいい。
ひどいときは失禁すらしているのに。

Losing the scent : ” scent “

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PENTAX K100D, SIGMA 17-70mm DC MACRO

君の、脂っけのない肌や髪に、腕を回した。
それが大抵屋外だったためか、君がどんな香水をつけているのか、
今まで何も感知することがなかった。
そういえば、君の部屋もあまり匂いのない部屋で、
強いて言えば、安いシャンプーを詰め替えたときの匂いが、
こざっぱりとした洗面所に漂っているだけだった。

僕は、もう一度君に腕を回した。
乾いた肌の匂いがした。

今、僕が香水売り場の前で昔の恋人を思い出すように、
君のことを、君のいない場所で思い出すことはできるだろうか。
それは、物理的には不可能に思える。

僕ができるのは、たくさんの言葉によるヒントを散りばめて、
せいぜい嗅覚をだますことだけだろう。

だから、できるだけたくさんのヒントを。
できるだけたくさんの証拠を集めさせて。

 


※テキストはフィクションです。

このほか、同じシリーズとして、
" appetizer "、 " listen " 、 " touch " 、 " feelings " 、  " vision " をupしています。

五感+1感覚(当初は第六感的な感覚といいたかったのですが、実際はそうでもなかった(笑))
のシリーズになっております。
よかったら、ご覧ください*

 

Downy : ” appetizer “

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using vinyl filter ( handmade )

君を誘って、レストランへ行くとして。

どこへ誘えばいいのかな。
どんなものが好きだったっけ。

わたしも君と一緒のときには、
ふたりで煙草を吸うか、
フリスクをなめているか、
そうでなければミネラルウォーターをよく飲んでいた。
やたらといろいろなものを食べなかったのは、
キスの多さでは、どんなボーイフレンドよりも群を抜いていたからかもしれない。

うちで何か作って食べようよ と、君はよく言っていた。
そんな買い物帰りに、
腕の内側同士がふとふれあったとき、お互いにさらっとしていて気持ちがよく、
なんども触れ合わせてみたくなったことがあった。

イタリーの向日葵の映画を見ていたら、
息苦しくなってクラクラした。
向日葵の産毛。



※テキストはフィクションです。

このほか、同じシリーズとして、
" listen " 、 " touch " 、 " feelings " 、  " vision " をupしています。

 

Mood in blue : ” listen “

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月が、五線譜にひっかかっている。

わたしは、電線でいっぱいになっている夜空の下を歩く。

わたしの歩調に合わせるようにして
思い出がひとつひとつ 指の間から落ちていって
夜の地面へ溶けていくような気がするので、
ふと歩くのをやめてしまおうかとも思うのだが、

夜とは思えないほどの暑さに、
クーラーが恋しくなっていたので、
そのまま歩いた。

家に着いたら、どうしよう。
また君の声を聴いてもいいのかな。



※テキストはフィクションです。

 

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ユウダチ : ” vision “

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あの日 君と外で手をつないでいたら
ふいに雨が通った

ふたりとも濡れるのは嫌いじゃないのだけど
雨の前は頭痛がして 身体がだるくなる体質で
今朝もお互いなんだかすぐれなかったので
やっぱり降ったね と、立ち止まって空を見上げていた

雨粒がピタピタと音をたてて頬をたたく
君が目を細めている

明るいグレーの瞳

わたしは瞬きを忘れて 覗き込んでしまう
雨雲の色を そして、その奥の闇の色までも

わたしの瞳のことを 君は言っていたようだったけど
たぶん 君の瞳が丸ごと映っていたんだと思うよ



※テキストはフィクションです。

夜明けの散歩 : ” feelings “

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夜が寒くなくなってきた頃
君と朝帰りする道で

一晩はしゃぎ通して 汗と疲れでクタクタになっているくせに
夜明けの光にあたってみると
額のあたりがすうっと浄化されるような錯覚

どうしてこんなに気持ちいいんだろう

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ひとり部屋へ戻って 一眠りするつもりが
頭が妙に冴え渡り
シーツが足に絡みついてくる
のどが渇く

どことなく攻撃的な気分
今 君と一緒でないことが 少し悔しいくらいだ

このままシャワーを浴びて
仕事へ出てしまうのもいいかもしれない

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そうして 辺りが明るくなってきた頃
眠りに落ちてしまう

どこか遠くで烏が鳴いた


※テキストはフィクションです。

 

A story

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それは、一種のだらしなさなのだろう。
彼女がつきあう男は、いつも意中の人、の、友達だった。
隣にいる男と仲良くしていればいつか意中の人へも手が届く、
というのが彼女の思考回路だったのだから。

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ある晴れた日に

Square format ( handcraft ), KODAK Ultra Max 400

太陽はどこへ行ってしまったんだろう?
この10日、雨ばかり。

ええと…奥から走ってくるコドモが、うちのちびです(笑

重力

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PENTAX K100D, smc PENTAX-FA 28-105mm

目が覚めたら、高井戸のマンションのソファに寝ていた。
前日の記憶はない。
たぶん、いつものように暮らし、いつものように眠ったんだろう。

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