雨のない6月 <Kの余韻>

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一瞬、梅雨らしい素振りを見せて、空は雲をどこかへ追いやってしまった。
空は快晴。
例年はこうで、今年はどこかおかしいと言いたいのに、
去年は、一昨年は、その前は、どんな6月だったかを思い出すことができない。

でも、Kと過ごした6月だけは、くっきりと思い描くことができる。


あの6月も、雨が少なかった。雨の記憶があまりない。

Kは、私に負けず劣らず、よく話す人だった。
私たちの会話は、ささやきから大きな笑い声へとクレッシェンドを描き、
また、ささやきへと収束し、波を描きながら、何時間でも話した。

どんなことを話した?
自分のこと、相手のこと、将来のこと、生き方のこと、色や絵画芸術のこと、音楽のこと、
恋のこと、まだ見ぬ愛のこと。
思いつくことはすべて口にしたかもしれない。

今考えても、Kほどお互いの話が沁み込んだ人はいなかった。
Kは、今、どうしているだろうか。

乾いた庭で、カメラを構えながら、数年前の6月を想った。


この写真は、クロスプロセスを経ています。

 

 
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