真昼の三日月
PENTAX K100D, Carl Zeiss Jena Pancolar 50mm
鳩子は思春期のころ、よく爪に白い三日月を浮かび上がらせていた。
生え際から覗いたその何ヵ月後かに爪の先に上がってきて、
それを切り落としたら、何か贈り物がもらえるというジンクスがあった。
鳩子はしゅっちゅうこの三日月があらわれていたので、きれいじゃないなあ、とため息をつきつつも、
そして、子供とはいえそんなジンクスを信じる年でもないのに。
これを切る頃にはどんなプレゼントを誰からもらえるのか、ちょっと期待していたようだ。
物としてのプレゼントというよりは、
男であれ女であれ
誰かがわたしに親しげな気持ちになっているかもしれない、
ということが、まだ折り目のきれいな制服を着た鳩子の心を、ウキウキとさせたものだ。
ピリッとするくらい寒い日の、青空にぽっかりと浮かぶ白い三日月。
音のない宇宙空間や、白い砂や小石だらけの衛星。
鳩子は、それはそういう衛星の1つだということを確かめるように空を見上げる。
どうしてだろう。
白い砂やククレーターのようなものを視界に認めると、鳩子は安心する。
直接触れたことはなくとも、遠くに見えるそれはいつもちゃんと実在している。
月にまつわるあやしげなジンクスなんかよりも、遥かに鳩子を安心させ、
そして、想像の世界へと羽ばたかせるのだ。
今の鳩子に、もう三日月は出ない。
※テキストはフィクションです。
もしかしてコレですか?例の月の写真。
枝の写りが繊細で、色も穏やかな感じでキレイだと思います。
自分の撮ったほうが稚拙に見えてしまいます(笑
これ、Pancolarで撮られたんですね。
こちらはシャープな写りをしてる感じがしますね。