Sky high

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結局、ぼくらは 「冷めても美味しい」 間柄ではなかった。
これから、君に残酷な告白をしなければいけない。

 

空気のようなもんだよ、 と、友達には強がって見せたけれども、
昔は愛しく眺めた君の無防備な仕草を、久しく見ていない。
見ないようにしていることに気が付いたのは、つい先週のことだった。

漠々と続く君との真平らな日常。
君の他に相性のいい女など思いつかないのに。
惰性で生きられないほど不器用ではないのに。
これが、 飽きる ということなのだろうか。

 

人間を相手に、洋服や音楽のように簡単に飽きてしまうものなんだろうか。
悶々と自問自答していた。
薄いコーヒーを飲みながら、灯の点らないネオンの前を通り過ぎながら、
電車でうたた寝している女の子を見ながら、
風呂場の曇った鏡に、雫が滑り落ちるのを眺めながら。

そして、ぼくは少し卑屈な気持ちになってきた。
何かぼくに欠陥があるようだ、と。

どうやら、ぼくに欠けているのは、理論と正義かもしれない。
君は、そう思うだろう?

でも、

と、ぼくは言う。
ぼくらは、ぼんやりとした何かで結ばれていただけで、
ひとたび晴れてしまえば、それは霧散してしまう。
ぼくらは数年ばかり、その霧の中に閉じ込められていただけだ。
情熱の話をしているのではない。
もっともやんとした、淡いもの。

そして、今はふたりの間に限りなく晴々とした、
否、君にとっては荒涼とした世界が広がっているんだ。
それこそ、ぼくらの論理ではないだろうか。

君は、どう思う?

 

 
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