深夜のアイスクリーム
皆が寝静まった頃、冷蔵庫の運転音以外に音のないキッチン。
ここでこうして座り込んでいると、猛烈な空腹が襲ってくる。
わたしは、もう間食はやめたのだ。
そこで、想像してみる。
お菓子の国のお姫さまを。
朝は、ベッドに朝食が運ばれてくる。
メニューはもちろん、ジャムとパンドミ、そしていくつかのペストリーだ。
ときどき、シリアルとミルクもありにしよう。
それを済ますと、ブドワールで身支度を。
すべてを召使たちの手で、おごそかに。
それから友人たちとお茶の時間。
プチフールをつまみながらがいい。
それからそれから…
ふと我に返って、床に放置したバッグを開けてみる。
バッグの底に、煙草の代わりに食べ始めたチョコレートの箱が、
半分つぶれたようになって入っていた。
深夜なら、コンフィチュールのかかったクレームグラッセが食べたいわ。
姫がささやくので、仕方なく、車に乗った。
こんな時間にアイスクリームなんか食べられるところ、あるのかしら。
森瑤子さんの話に出てくるような
甘い物と真逆の位置にいるような
赤いマニキュアを塗ったハンサムな
女性(母)が見えてくるようです。