The view
Solaris 100
助手席から海の方を見ていた。
たしかにこちらが海だったのに、
壁が現れたかと思うと海は運転席側に行ってしまう。
あたしたちの走る、曲がりくねった道。
路面から伝わる規則的な振動が、ガタンガタンという音をたて、
ラジオの音がよく聞き取れなかった。
埋立地にできたばかりのデートスポットを訪ねてきたところだった。
何もないところに好きな絵を描くとしたら。
女の人の好きなものや欲しいもので埋め尽くしたとしたら。
そんな場所だ。
ふたりとももう大人だったので、
あまりの安易さに感激はしなかったものの、手軽に楽しめる場所だったには違いない。
感想を言うのにいちいち頭を使うような映画を何本も観たふたりには、そろそろこんな緩慢なデートもいいのかもしれない。
ウィンドウショッピングをして、カフェでくつろいで、
適当な夕食も食べて、海の向こう側で揺れている街の灯りを見ながらの夜のドライブ。
…あくびが出そうだった。
家までどれくらいだろう。
車を運転したことのないあたしは、高速の看板を見てもピンとこなかった。
男はだまっていた。
今日はこの人の部屋に行くのかな。
そろそろ化粧落としやシャンプーのことが気にかかってきた頃、
車は高速を降りた。
所々に小さな街灯のある住宅街をボコボコと走って、
やがて一気に視界が開ける。
そこは空に近い場所。
一枚の黒い紙のような夜空。
そして、そこは小さな灯りが夜の陸地に沈みながら、
奥まで染み渡っていくのが一望できた。
それぞれの灯りが、チラチラと音をたてているように見えた。
今、あたしの目にはキラキラがいっぱい詰まってる。
そんな大人気ないことを思う自分がいやになった。
そして、やるじゃない、と男を小突いた。
※このお話はフィクションです。
※この記事は、choco*photoへトラックバックしています。
chocoさんの撮った、雰囲気のある夕暮れや宝石箱のような夜景が見られます。
私はあまり夜景を撮るチャンスがないので、chocoさんのところで満喫してくださいね~^^
ああ、なんだかぐっときた。
うまく言葉に出来ないのがもどかしいんだけど。
最近、素敵な景色や夜景を見たよ。
Joe さんにも見せたいと思ったよ(^-^)
でも、やっぱりそういうものって、好きな男に見せてもらうもんなんだろうか、なんて思ったり。
私も、自分が発掘するばっかりじゃなく、誰かに見せに連れてってもらわないと(笑)
雰囲気のある写真も、いい感じですね。
撮り方も好きだし、lomo+Solaris の描写もすごく合ってる気がします。
文章と相まって、身体に沁み込んでくる感じがした。
それと、TB ありがとう!
私も TB させてね。
ところで。
「馬鹿って言ったらカバと結婚しなきゃいけないんだよ!!」はかなりヒットです(^-^)
Jewel Box
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■Joe さん 「 モーヴの書簡 」の ” The view ”
・Joe さんの描き出す、独特の世界。その世界は、描写が美しく、時に少し切ない。
淡々と言葉を紡ぎつつも、誰もが持つ心の小さな傷に引っ掛かるような、甘くほろ苦い世界に思えます。
今回は、夜景がモチーフとして使われて…