海と空を眺めながら
東京湾、海上から。
あのときいいなって思ってたのは、お前かU田で…
河口を見下ろす、湾岸のホテル。
窓際のソファに腰掛けて話すNの声が、遠くに聞こえていた。
U田さんの、美しい面影を思い出し、なるほどね、と思った。
お前、とNが言ったのが聞き取れたが、それはどこにも刺さることなく、
どこかへと虚しくすりぬけていった。
そして、その2,3日後、私たちは些細な事から言い争いになり、
それ以降、『いい関係』ではいられなくなった。
そんなことがあったので、あれは告白だったのだ、と、
ずいぶんと時間が経ってから思った。
Nは、どちらかというと器用な男で、女の気持ちがよくわかるようなところがあった。
その割には、いざというときに躊躇してしまった。
だから、私はすり抜けてしまったのだ、と思った。
しかし、そうではない。
好きな相手の言うことならば、何でも好意的に解釈してしまうではないか。
好きな相手の態度に、いつも好意の印を探していたことに思い至った。
相手に思いを伝えるとき、それが雄弁でも饒舌でも、そして口下手でも結果は同じなのだ。
その朝、Nは仕事があるから、と、私より一足先にホテルを出ていった。
私はひとりでルームサービスを取り、埋め立てられた湾岸を散歩した。
海は静かで、汚れた色をしていた。
しばらく書き物をしていなかったので、久しぶりにモチベーションが上がって書いてみました。
雑文、お目汚し失礼いたしました。